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DATE: CATEGORY:・歴史・時代小説
真田太平記〈第11巻〉大坂夏の陣 (新潮文庫)
真田太平記〈第11巻〉大坂夏の陣 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥780
release : 1988/02

血が熱くなります。

真田幸村の生涯の総決算とも言うべき大坂夏の陣の終局が語られる本作のクライマックス。
絶望的に不利な状況下で最後の最後まで勝負を捨てることなく戦い抜く幸村。
毛利勝永の奮戦や草の者の最後の働きに支えられて幸村が家康本陣に突撃するあたり、
身震いを禁じ得ないほどに臨場感・スピード感を持って描かれており、
否が応でも感情移入せざるを得ない。信之が幸村を偲ぶ下りには思わず涙してしまった。

沖田総司
沖田総司
新人物往来社
price : ¥1,890
release : 1999/04

一気に読みました

新撰組、特に沖田総司に興味を持って、彼を主人公とした小説を探していて出会った作品です。
各所にあるレビューなどを見てもほとんどが好評価で、
大きな期待を持って読み始めたのですが、実際、期待通りの作品でした。

この作品では、主人公の沖田総司はもちろん、近藤勇、土方歳三などの幹部を中心とした
登場人物たちが、新撰組ファンにとっての理想形の人物に描かれています(私にとってだけかもですが・・)
更に戦いの場面よりも心の動きを中心に描かれているので、非常に感情移入しやすく、一日で一気に読んでしまいました。

史実を重視される方にはあまりオススメできませんが、
沖田総司、そして新撰組に儚さや青春時代の愚直なまでの純粋さを求めるような方、
また、新撰組に興味がなくても青春小説が好きな方ならきっと満足できる一冊だと思います。
刺客―密命・斬月剣 (祥伝社文庫)
刺客―密命・斬月剣 (祥伝社文庫)
祥伝社
price : ¥620
release : 2001/01/11

風の果て〈下〉 (文春文庫)
風の果て〈下〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥500
release : 1988/01

人生を知ること・・

若者達は世の中へ巣立っていく。互いの信念を基に。
信念は生き様であり、物語は各々の生き様そのものが
交錯していくことで進んでいく。
上巻での謎は徐々に明らかにされていく。

結末は予想通りだが、そこに至る真実の意外性は圧巻。

私が藤沢作品に求めるものは「人生を知る大人の姿」

しかしながら、本作品を読み、人生を知ることの奥深さを
再認識するとともに、大人になるために乗り越えなければ
ならない試練の重さと、それを乗り越えるためには知恵を
持たなければならないことも痛いほどに感じた。

太公望〈上〉 (文春文庫)
太公望〈上〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥740
release : 2001/04

名セリフ満載の素晴らしい小説

千年に一人の天才軍師と言われる太公望だが、
太公望以前には兵法が存在しなくて、
神のお告げで動いていた軍隊を合理的な法で動かした、
兵法の創設者というのが正しい。
もっとも優れた兵法家は孫子だと思うが、
平和的中立主義を諌めて、民族を守る為には戦わなくてはいけない、
と主張する太公望の教えは孫子より右翼には受けると思う。
少年時代に商の受王に父を殺され、
商王朝打倒の怨みを抱いて成長した太公望は、
周公と太子発の人柄に触れて怨みは浄化され、
受王をぶち殺したいとは思わなくなったのだが、
厭戦思想を持つ自分の民族が商王朝に辺境に駆逐されていく、
現状は正さなければならないと、
周と召を操り、商王朝を打倒することになるのであるが、
悪の帝国の商を倒しても、商が作った素晴らしい文化
<文字>は消えることはないだろうと思うのは清清しかった。
敵にも学ぶことはあるという太公望の知識欲には萌え萌えでした。
倒すべきは悪しき風習であり、本当の敵なんていないのだ。
太公望に討伐された悪しき山賊が改心して、太公望の部下になるのだが、
知的に成長し続ける元山賊に太公望が舌を巻くシーンもあったりして、
環境が悪いと人は悪になるということがよく判って感動しました。
山に篭って剣術の修行をした太公望は、目にも止まらぬ早業で剣を使えるようになり、
下山しようと思ったのだが、師匠は文字を知っていたので、
ついでに文字も習い始めるのだが、
文字に興奮して文字にのめり込むシーンが、
ヘレン・ケラーの奇跡の人のラストシーンみたいに感動的である。
努力して文武両道の人になった太公望だが、
有能になって目立って、豪族に目を付けられて、
豪族の娘と結婚する破目になる。
家庭の幸福に溺れ、
世界平和の為に商王朝を倒すという野望を忘れかける太公望だが、
幸運なことに妻が病死してくれて、
天の意志を感じた太公望は策謀の場に帰ってくる。
不幸はより良い幸福の前兆だと考える、
太公望の前向きな考え方は生きる力を与えてくれます。

真田太平記〈9〉二条城 (新潮文庫)
真田太平記〈9〉二条城 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥780
release : 1988/01

孤宿の人 上
孤宿の人 上
新人物往来社
price : ¥1,890
release : 2005/06/21

いろいろな面で無理が目立ち物語に没入できませんでした。

●以下下まで含めた感想です。●とにかく重いです。海に面した開けた土地を舞台にしているのにものすごい閉塞観が漂っています。江戸が舞台のほかの作品ではまった人はあの闊達さを期待するとちょっとがっかりします。●登場人物の感情の動きや思考過程にいまいち共感できませんでした。彼女の作品で登場人物がハリウッド映画よろしく敢然と運命に立ち向かうなんてことは期待しません。でも他の作品の主人公なり脇役なりを鑑みると状況に流されつつも犠牲を最小限に抑えようとしたり自分が潰されない範囲で僅かな理想の痕跡を残そうとささやかな抵抗を試みたりします。そういう巧妙さや柔軟性によって体現されるリアルで逞しい崇高さが好きだったんですがこれの登場人物からはまったくそういう心意気や慧眼が感じ取れませんでした。ご都合主義的なくらい後手後手に回り過ぎだしあまりにも環境や状況それによってもたらされる損害を甘受し過ぎです。ありのままを呑み込み過ぎる。どうも今までの作品のような趣がなかったです。田舎者の長いものには巻かれろという習性が偏見のように羅列されています。巻かれるにしてもいい加減うまい巻かれ方があるだろうってちょっと歯痒かったです。●最期のカタストロフの発生が私にはどうも力技っぽくて無理がありました。今までの伏線がいかにもそれのために用意されているのがあからさまなんで。●真実や後日譚を明かさずおぼろげにしているエピソードが多いです。詳細が伝わっても小さな影響しかない人物の末路なんで隠す意味が分かりません。その割には核心的な大物の謎を会話で唐突にばらしてしまったり。●無駄に長い説明台詞が多いような気がしました。橋田さんのドラマみたいな箇所がいくつもありました。●いろいろ難儀でしたがまったく立ち止まらずに読めました。やはりうまさは抜群です。ただし今回は芸術家的なうまさではなく職人的なうまさだけでどうにかしのいだ感じでしょうか。
暴れ彦四郎―鎌倉河岸捕物控 (時代小説文庫)
暴れ彦四郎―鎌倉河岸捕物控 (時代小説文庫)
角川春樹事務所
price : ¥700
release : 2002/06

ちょっと寂しい

彦四郎が命を狙われる危機があり、
政次がそちらにかかりきったりしながら、金座裏では色んな事件を解決していきます。
彦四郎はいい味が出てて、楽しめました。

ただ、この巻ではしほが川越へ行く事になり、ほぼ登場しません。
やはり4人揃ってないと何かが物足りない感じがしてしまいますね。
ってことで、星を一つ減らしました。
太公望〈中〉 (文春文庫)
太公望〈中〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥740
release : 2001/04

んんんんんんんんん。

いや、人間のすごさというか、できすぎた人間
ドラマを見ているようだ。

しかも、おもしろい。
続きが気になる。
そして、淡々と話は進む。
途中で本を置く(閉じる)ことをするのが申し
訳なるぐらい、続きを読んでしまう。

この世にこのような人がいないことにより、あ
こがれを含めてこの物語に夢中になるのだと思
います。

それと、望どのはまさにコロンブスの卵をおこな
った人であることは確か。
ちょっとしたことに目を向け、応用をおこなう・
・・それが出来ないから凡人は凡人のままなのだ
ろう。
楽毅〈2〉 (新潮文庫)
楽毅〈2〉 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥620
release : 2002/03

臣下がいかに優秀でも王が愚昧ではどうしようもない

趙の武霊王の直々の中山攻略始まる。
楽毅は戦い、勝ち続ける。しかし、彼の国中山国は滅亡への道を
突きすすむ。

人間は、困難の時に大きく飛躍するきっかけをつかむ。
この苦しい戦いの中で楽毅が学ぶこと。

それは、世界さえも揺るがす大きな力となっていく。
感動の中に身をおき、読み込む本です。

翔ぶが如く〈2〉 (文春文庫)
翔ぶが如く〈2〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥570
release : 2002/02

征韓論の攻防

第2巻は西郷隆盛を中心とした征韓論をめぐる攻防。西郷の遣韓大使派遣はいったん決まったかに見えたが、反対派の巻き返し工作によって、西郷はしだいに追い詰められていく。
エピソードとして、元旗本の息女芦名千恵の物語があるが、全編を通して唯一小説らしい一遍であった。
水滸伝〈12〉炳乎の章
水滸伝〈12〉炳乎の章
集英社
price : ¥1,680
release : 2004/01

みんな子供

豪傑と呼ばれる人たちはとても純粋な気持ちの持ち主である。
友の死に責任を感じ自分自身を攻める大将、そして酒を酌み交わし涙する。雄雄しいだけが男ではない。
男の涙グッとくる。かなり素敵だ!
男は借りなど作らぬもの・・・借りたものは必ず返す。
立派な大将にはいい部下がつくもの。当たり前のことかな?それが男というもの・・・
漆の実のみのる国〈上〉 (文春文庫)
漆の実のみのる国〈上〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥540
release : 2000/02

藩政復興の物語

藤沢さんの最晩年の作品です。
貧乏に喘ぐ上杉藩の再興を目指した藩主の物語で、全編を通して政治、経済、そしてそれに伴う権力闘争が描かれています。
どちらかというと難しい政治の話ばかりですが、読了まであっという間でした。

この中には藤沢作品に特徴だった親子や夫婦の情愛、剣での闘争シーンはほとんど見られませんが、それでいて時に登場するそうしたシーンは短い文章であっても不思議に心に響きました。特に主人公の藩主「治憲」が、壮年期になって初めて暗愚と言われ軽侮していた前藩主へのとらわれから開放され、人として善き父であった彼に格別の思いを寄せる姿は胸打たれました。

また善と悪の狭間を描くのは池波さんの得意技でしたが、藤沢さんはこの作品の中でいわば藤沢流の善でも悪でもない人々を描き切っています。
名君と忠臣が足並み揃えて当たっても藩政は結局うまく行かず、忠臣はやがて汚職で失脚し、暗君と言われた前藩主の善性を見出し、断罪された重臣の息子たちは後に許されて忠臣として藩政で活躍する。
そこには善と悪でもない人々の姿が見出せます。

主人公はやがて藩主の座を退き、そして隠居の立場から最後の改革を目指し、その結果を最後まで描くことなく物語は幕を閉じています。
そこに独特な余韻と、この後鬼籍に入った藤沢さんの万感の思いが込められているように感じました。
大川わたり (祥伝社文庫)
大川わたり (祥伝社文庫)
祥伝社
price : ¥620
release : 2005/04

一力作品はさわやかEND  

大川わたりというタイトルが粋だね。「わたり」が「渡り」だったら本を手にしていなかったと思う。一力作品に初めて女の色香と濡れ場の場面が出てきた。藤花と名乗る芸妓あがりの女。今の女優さんに当てはめると誰がふさわしいかななどと思いは巡り作中にのめりこみ。クライマックスは言うてはなんだけど、これまでのまじめなストーリーからして奇想天外。おおだんなさんの解決方法、登場人物の扱いかた、場面設定は趣向を凝らして?おもしろい。そして,最後はめでたし、めでたし・・・・一力作品はさわやかEND  今晩も健やかに眠れそうです。おやすみなさい。
管仲〈下〉 (文春文庫)
管仲〈下〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥610
release : 2006/07

読むしかないでしょう

中国の春秋戦国時代に興味のある人なら管仲ははずせないでしょう。
ぜひ読んでください。時代がいくら流れても変わらないものや、志というものを考えさせてくれると思います。
名宰相ですねやはり!
漆の実のみのる国〈下〉 (文春文庫)
漆の実のみのる国〈下〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥540
release : 2000/02

遺作となった小説

藤沢周平作品は短編を多く読んでいますが、この作品は少し他に比べ難しい。
貧乏藩・米沢藩の執政による藩政のお話しです。
いかにして藩に富をもたらし、謝金をしのぐか。
借金返済のために導き出した人材・能力・計画、
それに対する反感と現実。
重荷を背負う人間の心情もまた見所です。
男女の愛や家族愛などは殆どありません。

華美されがちな藩上部の苦悩と現実、代わりゆく時代に溺れる人物像が現れています。
難しいと感じつつも、読む内にどんどんはまっていきました。
最後まで書き終えることなく逝った、藤沢周平の遺作です。
彼の見てきた江戸時代を感じる事が出来る小説です。
非道、行ずべからず (集英社文庫)
非道、行ずべからず (集英社文庫)
集英社
price : ¥880
release : 2005/04

人の道と藝の道

タイトルにもなっている「この道に至らんと思はん者は、非道を行ずべからず」という「風姿花伝」の世阿弥の言葉を縦糸に、歌舞伎界の裏の世界を横糸に編まれた、見事なミステリーです。
歌舞伎界の表舞台に立っている人物だけでなく、裏に生きている人物の精緻な描写が、この物語の世界で起こっている殺人事件だけでなく、様々などろどろとした人間関係を共感、反感共々に感じさせてくれます。
ミステリーとしても、なかなか犯人の姿が見えず、読み応えのある作品です。
黄金のローマ―法王庁殺人事件 (朝日文芸文庫)
黄金のローマ―法王庁殺人事件 (朝日文芸文庫)
朝日新聞社
price : ¥630
release : 1994/12

難しい歴史書を手に取る前に。

都市シリーズ三部作の、三作目。
高級娼婦オリンピアの過去が明らかになる。

このシリーズは、ヴェネツィア共和国の名家の出身マルコ・ダンドロと、オリンピアの関わりを中心に、マルコの目で見た、実際に体験したことを、最近あったことのように、生き生きと描いている。
マルコの、見事な観察眼は筆者の目でもあるからだろう。

古代という大きな遺産を抱えたローマで、マルコの目は私たちの目にもなる。
ミケランジェロとの遭遇、老人とともに歩く遺跡群、政治から離れた彼は、実にのびのびと、趣味の世界に浸る。
面倒くさい歴史書、色話に陥りがちな興味本位の歴史本に比べれば、誰が読んでも、すんなりとルネサンス世界に入っていけるだろう。

しかし、彼の方も周囲も、共和国の政治から彼を放っておくわけはなかったが・・・。

衝撃を抱えてローマを去るマルコ。次回作を期待する。

小説 上杉鷹山〈下〉 (人物文庫)
小説 上杉鷹山〈下〉 (人物文庫)
学陽書房
price : ¥693
release : 1995/11

思わず涙が、、、

以前、書店で働いていた時に物凄く売れていた本。しかし、読んだのはつい最近。社会経験をしたからこそわかる部分も多いと思います。人間を捉える目線、作者の経験が生きています。『人は何を言ったかではなく、誰が言ったのかを気にする』・・・名言だと思います。
最近で言えば宮崎の東国原知事。事前には『あんな(スキャンダルも多い)タレントに何ができる』と思った人が数多くいました。ところが、今や彼のちょっとした発言も新聞記事に。この本を読むと、人間の持つ『先入観』『固定概念』についても考えさせれます。
真田太平記〈第12巻〉雲の峰 (新潮文庫)
真田太平記〈第12巻〉雲の峰 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥780
release : 1988/02

夢中にさせられる

とある雑然とした古本屋さんの書架の上に、文庫本全12巻が無造作に
荷造り紐にくくられてありました。1,200円で購入し、約半年で読み終えました。

すっかり池波正太郎さんや真田一族のファンになり、上田市の真田太平記念館や
上田城を見学したり、東京都台東区の池波正太郎文庫も見に行きました。


二宮金次郎の一生
二宮金次郎の一生
栄光出版社
price : ¥1,995
release : 2002/05

いろいろ考えさせる伝記

1、この本を読んでよかったと思うこと
二宮金次郎といえば、薪を背負って読書する姿や、農政の専門家といったイメージがあるが、この本を読んで、商才に長けた実務家というイメージも持った。そのようなイメージを持てたことがこの本を読んだ最大の効果といえる。
2、この本のイマイチなところ
あまりにも金次郎が聖人君子に描かれているように感じた。もとの伝記がそうだから仕方がないかな。
3、この本を読んで考えたこと
(1)この本を消費者金融や事業金融に携わっている人すべてに読んでもらいたいが、現代では儲けを出さなければならないので金次郎流をそのまま適用するのは無理か。
(2)ある本によると、小泉純一郎は金次郎と志が同じだそうだが、小泉のやっていることは金次郎のそれとは程遠いと思う(たとえば法人税の減税や発泡酒の課税は庶民のための政策とはいえないのではないか。ただ、消費税の増税の凍結のように金次郎と同様庶民の立場に立っている政策もあるが)。でも、これも時代が違うから仕方がないか。
4、結論
いろいろ考えさせるところがあるいい本だが、金次郎をよく書くあまり、突込みが足りないと思わせるところがあるので、星4つである。
秀吉の枷 (下)
秀吉の枷 (下)
日本経済新聞社
price : ¥1,680
release : 2006/04/18

面白くはありますが・・・。

前作では、信長の遺体消失の謎を軸に、太田牛一という記録者の視点から本能寺の変のからくりを解き明かした。着想の斬新さとドラマ仕立ての巧みさには堪能させられたものだ。それと比較すると、続編とはいえスケールは落ちる。そうはいっても上巻は、専制化し神格化への傾斜を隠さない信長への恐怖や長く抑圧されていた敵意から、主殺しの計略に踏み込んでいく秀吉の心理が史実との間の破綻もなく組み立てられている。さすがと思わせる内容だ。しかし、下巻は、老耄期に入った権力者の孤独と悲惨を浮き彫りにしてはいるものの、晩年の愚行や狂気、例えば秀次一族の誅滅の謎解きなどが小ぶりだ。秀次事件に連座して一族滅亡する川並衆・前野将右衛門に秀吉謀臣の役を振ったところは面白いが、歴史の脇役に光を当てた成功度でいうと前作の太田牛一に遠く及ばなかった。(史書の改ざんをしたたかに仕組み強制する権力の簒奪者秀吉、それに面従腹背で抵抗する史実の記録者・牛一という前作の構図は、エピソードの一つとしても鮮やかだった。)
楽毅〈3〉 (新潮文庫)
楽毅〈3〉 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥620
release : 2002/04

英雄の最後と飛躍の時

楽毅の獅子奮迅の働きも空しく、中山国が滅ぶ。
その最後の時に、武霊王が部下達に語る言葉は心を打ちます。

 彼らは、国を失って戦っても無意味なはずだ。
 しかし、あの若い王に従って殉死しようとする人間が600人も
 いる。私が死ぬときには、果たしてどれだけの人間が同じように
 殉死してくれるのだろうか。

その後の武霊王の計らいにより、中山国の王は命を助けられること
になります。そして、その武霊王に最後の時が突然やってくる・・。

そして、楽毅が中国全土に名を広める時代がこようとしていた。

多くの感動と、多くの思考と、多くの涙を流さずにはいられない。
この巻も見所がいっぱいです。

似せ者 (講談社文庫)
似せ者 (講談社文庫)
講談社
price : ¥680
release : 2005/08/12

いま最もブレイクしてほしい作家

おなじみの歌舞伎を題材にした時代小説短編集。

歌舞伎役者、お仕打ちと呼ばれる興業を取り仕切る者、お囃子方などを
中心に、芸の世界を描いていきます。

ややプロットにもたつきがあり、わかりにくかったり、無駄だったり
するのが残念。すっきりと描けると、松井今朝子はもっとブレイクする
のに、といつも思います。

特に役者が役に心と体が入っていく面持ち、心の変化。それを舞台に
乗せた時の劇場との一体感の描写が秀逸。この役者の精神統一や舞台の
臨場感を描くと、松井今朝子は本当に上手い。

歌舞伎に縁がなくても、読み手の想像力をグイグイと引き出して
いきます。

楽毅〈4〉 (新潮文庫)
楽毅〈4〉 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥700
release : 2002/04

生きることの難しさ

信じる人を間違えたり、判断を一つ間違えるだけで
大国が滅亡してしまう時代。
正しく生きようとした楽毅をしても
暗君のために国を追われてしまう。
人は疑い深くて、嫉妬深いものだと感じた。
武霊王、孟嘗君も最善をつくしたのだが。
すべては天命なのか。

全編を通して生きることの難しさが
描かれています。

剣客商売〈5〉白い鬼 (新潮文庫)
剣客商売〈5〉白い鬼 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥580
release : 2002/11

面白すぎ

小兵衛、大治郎ともに素晴らしい剣の達人でありながら、心が高潔で柔らかく、まさに理想の男達ではないでしょうか。いまどきの主人公達のように不自然にかっこいいということがありません。人間の目指すべき姿が、とてもよくわかるような気がします。今の若者にこそ是非読んでもらいたい作品です。
伊能忠敬―生涯青春 (人物文庫)
伊能忠敬―生涯青春 (人物文庫)
学陽書房
price : ¥693
release : 1999/06

武王の門〈上〉 (新潮文庫)
武王の門〈上〉 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥700
release : 1993/08

ハードボイルド歴史小説?

南北朝の騒乱の中、後醍醐帝の子として生まれ、征西大将軍の大役をを科せられた牧宮(懐良親王)と、肥後の猛将、菊池武光を中心とした、壮大な夢の軌跡である。。。。

南北朝時代と言う、これまで書かれた事の非常に少ない時代を選んだ着眼点、プロットの面白さ、ストーリーの巧みさもさることながら、牧宮や武光の主人公、そして彼らを取り巻く「脇役」とも言うべき、五条頼元、忽名水軍の面々、松浦水軍、敵役としての小弐尚頼、影の存在としての葦影などの人物描写は「さすが」、と唸らせるものがあり、読み進むうちに、牧宮と武光の九州制覇を応援する自分が居た。(完全に作者の術中に嵌っているが、それがまた心地良い。)
ーーーーーーーーーーーー
北方健三の歴史小説?
友人に勧められてこの本を読む事になった当初、そのミスマッチに違和感を覚えた事を覚えている。しかし、その期待は全く良い方に裏切られた。。。
その後読んだ司馬遼太郎の作品が、なんだか味気ないものに感じられるほどに。
この本をきっかけとして、私は北方歴史小説にどっぷりと嵌って行く事になった。

騙されたと思って読んで見ると良い。

馬上少年過ぐ (新潮文庫)
馬上少年過ぐ (新潮文庫)
新潮社
price : ¥620
release : 1978/11

充足感

短編集である。伊達政宗という人間の魅力を、司馬氏ならではの
視点で描き出している、「馬上少年過ぐ」は実に面白い。戦国期
における東北の保守性と、政宗の新しさ。司馬氏は思ったでしょ
うね。一種名門に生まれ、素性のよさにすがるのではなく、或い
は織田氏のように素性の悪い合理的な思考を持った政宗。そして、
母に愛されずに育った政宗。弟を自ら成敗せざるを得なかった政
宗。父を見殺しにせざるを得なかった政宗。尋常ではない育ちで
ある。幸いにして、政宗が再興した伊達家は、江戸期をも保った。

他短編がいくつかあるが、どれも人物描写が素敵で、戦国の世や
幕末の風雲の点景を現代に生きる我々に、非常にリアルに見せ付
けてくれている。

悉くが、司馬氏らしく、通勤中に読んでいると、気がついたら目
的地にたどり着いている。通勤時間が短く感じるというものです。
水滸伝〈11〉天地の章
水滸伝〈11〉天地の章
集英社
price : ¥1,680
release : 2003/09

適材適所

梁山泊では、死者が出たり、新しく加わるものも出てきて人の入れ替わりが激しい。それを、うまく配置する呉用殿は、すばらしい。
同胞をわざと離れさせる、心憎い。その分、いやなやつと思われるところもあるが、そんなことお構いなし。彼(呉用)の頭の中はいったいどうなってるの?寝る間も惜しんで考えて考えて・・・これ、全て梁山泊のため。
小説十八史略〈6〉 (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
小説十八史略〈6〉 (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
講談社
price : ¥840
release : 1992/06

遂に最終巻。唐の衰退・滅亡、北宋・南宋の時代、そして元が南宋を滅亡させるまでを本書でカバーしています。

安史の乱の後命脈を保っていた唐が黄巣の乱をきっかけに遂に滅亡、五代十国の混乱期を経て北宋の時代に入るが、武より文を重んじる官僚国家の故か、遼などの周辺の国に悩まされ、遂には金に華北を奪われ、ここに再び南北(金と南宋)対立の時代を迎える。その間にチンギス・ハン率いるモンゴル帝国(元)が勃興し、金・南宋は滅亡する。本書が取り上げるのはそれだけ長い期間である。そのせいか、記述は要を得ているものの、駆け足気味なのが気になる。しかし、黄巣の乱の凄さとそれが唐に与えたダメージ、官僚国家宋の党派争いの凄まじさ等、歴史発見の面白さを堪能させてくれる点では他の巻に劣らない。中でも私に強く印象を与えたのは、北宋の風流天子・徽宗の政治面でのあまりの無能ぶり(苦しんだ民が団結する水滸伝の時代背景になったのはもっともである。そして金と結んで遼を滅ぼしたものの、金を怒らせたあまりの背信ぶり。これでは金の南進を招いたのも無理はない。)、北方民族の江南に寄せるあこがれの強さ(無理な江南侵攻を企てて失敗し、皇帝の地位を失った金の海陵王がその代表)、そしてユーラシア大陸の大半を征服したのに、意外と元が南宋制圧に苦労したことである。中国南北の自然・経済力の差はそれだけ大きかったということだろう。本書でさらに嬉しいのは、南唐後主、北宋の王安石と蘇軾の心に染みる詩を紹介してくれていることである。激動の時代の中で優れた詩が生み出されたことを我々は忘れてはならない。さて、最終巻まで読み終えた読者は中国史の面白さの虜になったことだろう。残念ながら本シリーズは明・清の時代は扱っていないが、例えば同じ作者の「中国の歴史」等、それらの時代をカバーする本は多数あるので、是非自分のお気に入りの本を見つける楽しみを味わって下さい。
鬼平犯科帳〈18〉 (文春文庫)
鬼平犯科帳〈18〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥500
release : 2000/11

二枚目―並木拍子郎種取帳 (時代小説文庫)
二枚目―並木拍子郎種取帳 (時代小説文庫)
角川春樹事務所
price : ¥714
release : 2006/06

予想外の展開

「一の冨」に続いて、並木拍子郎が大活躍する「捕物帖」です。と言うよりも、前作と違って、ヒョウさんの一人舞台です。
今回は、「輪廻の家」「二枚目」「見出人」「宴のあと始末」「恋じまい」の五編ですが、男女の仲の難しさを、しみじみとした情感たっぷりに描いて行きます。
それにしても、五瓶・小でん夫妻の間がこんな状態に陥るとは、予想だにしませんでした。おあさの初恋の人との関係も、今ひとつすっきりした決着になっていません。何よりも、拍子郎のおあさへの想いももう一つはっきりしません。
一つ一つの物語は文句なしですが、主要人物たちの人間関係が、ぎくしゃくして終わるのは・・・。早く、三冊目を書いてすっきりさせて欲しいものです。
小説十八史略〈5〉 (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
小説十八史略〈5〉 (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
講談社
price : ¥790
release : 1992/05

第5巻は隋の滅亡、唐の建国、その全盛時代、そして安史の乱までを取り上げています。

本巻は、隋の煬帝の失政とその哀れな最後、その後群雄割拠の時期を経て、唐が中国を統一し、武則天による中断を挟むものの、太宗による「貞観の治」、玄宗による「開元の治」を中心に大帝国の絶頂期を迎えたのもつかの間、権力の腐敗が忍び寄り、安史の乱が勃発、顔真卿・郭子儀ら忠臣の獅子奮迅の活躍もあって安史の乱が終息するが、盛唐の時代も終わりを迎えるところまでをカバーしています。このうち、隋末・唐初の混乱期は隋等演義で取り上げられ、日本でも田中芳樹氏等の良書もありますが、多彩な人物が入り乱れて「中原に鹿を追う」波乱の時代であったことはあまり知られていないのではないでしょうか。本書では100頁以上を割いて紹介してくれます。そして意外と知られていないのは、貞観の治も開元の治もライバルの粛清から始まったという事実。食うか食われるかの時代だったのですね。また、この時代は好き嫌いはあるでしょうが、女性が華を添えた時代。武則天が中国史唯一の女帝にまでステップ・アップしていく過程には読者は引き込まれずにはいられないでしょう。彼女は優れた政治家でしたが、晩年は君側の奸の跋扈を許し、寂しい死を迎えます。奸臣が除かれ、唐が復活する場面は気分が晴れ晴れします。そして楊貴妃。親戚の不良少年あがりの楊国忠が台頭して玄宗側近の座を安禄山と争ったのが安史の乱の直接の原因。長安をのがれたところで軍がストライキを起こし、軍の要求に屈した玄宗が彼女を殺させる場面は、哀れな女の最後として本書のクライマックスと言えるでしょう。著名な人物が多数登場して波乱万丈の人生模様を織り成す本巻も、歴史の面白さを満喫させてくれます。欲を言えば、政変に巻き込まれた李白・杜甫・王維といった大詩人も取り上げていたらもっと充実した本になったでしょう。
真田太平記〈7〉関ケ原 (新潮文庫)
真田太平記〈7〉関ケ原 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥740
release : 1987/12

真田太平記ならではのシーンの数々

真田太平記は第1巻からずっと読んでいます。関ヶ原の戦をとりあげたこの巻では他の小説やドラマ・映画で大きく取り扱われる小早川秀秋の裏切りや島津義弘の敵陣突破の他に、関ヶ原以外の場所で行われた戦い、はっきり言って、関ヶ原の本戦に間に合わないように上田で真田昌幸・幸村父子が徳川秀忠の軍を食い止めた場面や真田家の草の者(忍者)の関ヶ原近辺での活躍が細かく描かれていて、見慣れた関ヶ原のシーンよりずーっと面白いです。お江、惜しい!なんてネタばらしは反則かな?
それまでのストーリーを知らなくても楽しめる1冊です。
新装版 戦雲の夢 (講談社文庫)
新装版 戦雲の夢 (講談社文庫)
講談社
price : ¥770
release : 2006/05/16

戦国ものというよりヒューマンドラマ

この作品で司馬が描くのは長曾我部盛親。
関が原に敗れ、大阪の陣で敗れた、無能な2代目…というイメージのこの大名に見事に光をあてた佳作です。盛親が人生を転落していくさま、そしてどん底の生活から最後の大勝負にうってでるまでを、その性格や人間関係が濃密に描かれています。
イメージと異なり、盛親は武芸に秀で、戦上手でもありました。しかし、野望が薄く世の流れに身を任せてしまう性格であったことが、その運命を決めてしまった感があります。
戦国ものにも関わらず合戦シーンはごく限られていますが、キャラの異なる5人の女性との関係、旧友との友情と別れ、浪人時代に官吏とその情婦によって虐げられる様子、大阪の陣で城に籠もる浪人たちの爽やかな武将ぶり、などなど、人間くさーい描写が豊富で、楽しめる1冊です。
闇の処刑人―刺客請負人 (中公文庫)
闇の処刑人―刺客請負人 (中公文庫)
中央公論新社
price : ¥620
release : 2006/07

黒白 下巻 新装版   新潮文庫 い 17-18 剣客商売 番外編
黒白 下巻 新装版 新潮文庫 い 17-18 剣客商売 番外編
新潮社
price : ¥740
release : 2003/05

センスが光るタイトル

数ある「剣客商売」の中で一番好きな話です。山場は何と言っても小兵衛が悪漢を退治する場面ですが。この話は完全に脇に徹してますね。若い頃のエピソードが描かれているのがファンにはたまりません。そういえば仕事をサボって営業車の中でむさぼり読んでいたのを思い出します。とにかく正・番外あわせて、読み出したらとまらないシリーズですね。もしかしたらこの上下巻から読むと良いかもしれません、剣客商売の描かれる何年か前の話なのですから。
吉原御免状 (新潮文庫)
吉原御免状 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥700
release : 1989/09

惹き付ける男

色町・吉原を今までにない解釈で描いた傑作小説。
主人公・松永誠一郎は、俗世間を知らずに山で育った青年。当然、澄んだ心の持ち主である。
とある事情から今までとは真逆にある世界の吉原と関わる事になる彼は、どんな人間とも真剣に向き合う故に悩み、迷い、涙を流し結論を出す。そんな彼に関わる人間は、彼の為ならば喜んで命を落とす人達ばかり。
人間と人間の魂の結び付きを見せ付けられます。

誠一郎に俗世間の“しきたり”を教えながらも、彼の純粋さに惚れ抜いている幻斎のラストの啖呵は涙がボロボロ溢れました。

人間って本来はこうじゃなきゃダメなんだよな。
鬼平犯科帳〈16〉 (文春文庫)
鬼平犯科帳〈16〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥540
release : 2000/10

年末年始にピッタリの鬼平シリーズの1冊です

年末年始ともなると、楽しめて、かつ、読後にさわやか感が残るものが読みたくなりますが、その点、「鬼平犯科帳」シリーズなどははピッタリではないでしょうか。鬼平こと長谷川平蔵の人格の大きさに感動するもよし、おなじみの同心や密偵やたちの活躍にハラハラするもよし。
また、この巻での特徴といえば、うさぎこと木村忠吾がお嫁さんをもらい、他の同心たちにのろけまわり、果ては平蔵にまでのろけて怒られる所、また、平蔵の道場時代の剣仲間が登場し、知られていなかった平蔵の道場時代が分る所でしょうか。
何れにせよ、他の巻同様、楽しさと共に、読後の味わい深さが残る1冊です。
陰陽師 瘤取り晴明
陰陽師 瘤取り晴明
文藝春秋
price : ¥1,400
release : 2001/10

【商品詳細】

平大成(たいらのおおなり)と中成(なかなり)の双子は、都では有名な薬師だ。彼らには頬にひとつずつコブがあった。ある日、薬草を採りに山に入った大成は道に迷い、偶然鬼たちの遊宴に遭遇してしまうが、命がけで舞い踊った大成は鬼たちに許されて、邪魔なコブを取ってもらう。しかし、鬼たちは彼に半月後、もう一度踊るよう強いる。双子の危機を知った「陰陽師」晴明と博雅は、鬼たちのいる山へと潜入するのだった。 本書は、夢枕獏の公式ホームページ上で連載されたものである。あとがきにもあるように、本書は小説というより、絵本として作られた。村上は、夢枕の「陰陽師」シリーズの装画をずっと担当してきた。夢枕は以前から村上と「本文と絵が等分に入った物語」をやりたいと思っていたという。 民話「コブ取り爺さん」を下敷きにしたストーリーには、いつもの陰陽師シリーズにあるオドロオドロしさはない。むしろひょうひょうとした温かみのある雰囲気に包まれている。それは、ここに収められた村上の40点以上にもおよぶカラー絵によるところが大きい。彼が描く物の怪たちは、どれもひょうきんでかわいらしい。安部晴明や源博雅も、たちまちユーモラスなおじさんになってしまう。 さらに、通常の単行本よりは薄く小さい本のサイズや、表紙の手触りが和紙のそれに似て、いつもと違う雰囲気を肌で感じることができる。(文月 達)

「本」を楽しむ本。カバーの色の重ね具合も味わって欲しい。

宇治拾遺物語の「鬼に瘤とらるること」(瘤とりの翁)をもとにして、いつものように清明が難題を解決するのに友人の博雅がからむお話。ほろほろと二人酒を飲み、「いこうか」「いこう」と不思議の世界にでかけて行く、おなじみの展開ではありますが、ここでは最後にこれまでの幾つかの話にでてきた妖怪たちも顔をだし、それがまた微笑ましくもあります。

獏さんの「陰陽師」シリーズのカバーを描いている村上豊さんの絵の、おどろおどろのなかに滑稽味のある雰囲気が獏さんの文となんとも調和してよい雰囲気になりました。文と絵のバランス、がよいのですね。文の間に、情景の想像を膨らませる小さな絵が入る。時間の経過を表すような見開きの、たとえば夜明けの空のような絵が、文章の作った時間の流れを少し変える効果を出す。そして、これは「なに重ね」というのでしょう、表紙の裏に重ねられた色も、一冊を素敵にまとめています。この色だけみていても和みます。版の大きささえ、大仰に大きすぎず、絵が小さくて物足りなくもならず、と考慮されいるようです。一冊の本として、よく完成している本です。「本」を楽しむことができる本、というのもよいものですね。

このまま、絵巻物につくってみせて欲しい、とも思います。読者のわがままですが、実現したら嬉しい。置き場所に困るでしょうけれど。

本所しぐれ町物語 (新潮文庫)
本所しぐれ町物語 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥540
release : 1990/09

切なく楽しい

藤沢「市井物」の大傑作である。「市井物」の傑作で短編集というとまずは「橋ものがたり」があげられるが、これはまたそれとは一味違う。本所深川、架空の町「しぐれ町」を舞台に、気のいい大家、情報通の書役、夫婦仲が醒めてしまった中堅商人、大人ぶる少女、浮気妻を許してしまう職人、浮気の虫を抑えきれない若旦那、等々。ときには主役に、ときには脇役で出てくる町の人々を描いている。私たちは読んでいる間はしぐれ町の住人になる。そして、「切ない」人生を共に「楽しむ」のである。

たとえば、胸の小さい若奥さんの話「乳房」が私にはとても切ない。おさよは夫に浮気をされてどうしても許す事ができない。飲み屋の主人おろくはそのおさよにこういう。「男なんてものは、土台そんなにりっぱなものじゃないんだよ。あんたが考えるほどにはね。そして今にわかるが…」「女だって、そんなにりっぱなものじゃないのさ。」おさよのくるくる回る感情が切なくて楽しい。

死神の町―刺客請負人 (中公文庫)
死神の町―刺客請負人 (中公文庫)
中央公論新社
price : ¥620
release : 2006/05

ささやく河―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)
ささやく河―彫師伊之助捕物覚え (新潮文庫)
新潮社
price : ¥700
release : 1988/09

本当に凄い人は、巨石を小石の様に持ち上げるので、その凄さが理解されない

藤沢周平は学生時代に詩を作っていたからなのか、非常に洗練された文章を書く。

例えば、かぎ括弧つきの台詞は文章の展開上やむを得ない場合を除いて必ず行の頭から始まり、かぎ括弧つきの台詞のあとに文章が続く事もない。「ささやく河」も例外ではない。
しかし「ささやく河」の中に、かぎ括弧つきのせりふの後に文章が続く箇所が一つだけある。
ミスではない。伏線を張っているのだ。

藤沢は、技巧派の作家ではない。しかし文章に関しては技巧派である。


幻の声―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)
幻の声―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥500
release : 2000/04

私は

他の方ほど高評価では無かったです。
面白く無いわけじゃないんですけど、1冊を通して起伏が少ないので
読んでてワクワク感や、早く続きが!みたいなのに少し欠けました。
捕物っていう側面は薄くて、
人との関わりや、恋愛模様がメインなのかな。
なので、そういうのが好きな人にはいいかなって思うのですが、物足りなさを感じました。
なんだか、個々の登場人物のキャラクターをイメージしずらかったです。
設定はちゃんとしっかりあってそれは魅力的ではあるんですが、
頭にその人像が浮かばなかったというか。

凄く読みやすいなぁとは思ったのですが、
続きを買うかは、保留中です。

風の果て〈上〉 (文春文庫)
風の果て〈上〉 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥540
release : 1988/01

読みだしたら止まらない!いっきに上・下巻!!

本年秋10/18?12/6毎週木曜
TV放映予定とのこと
NHK時代劇(全8回)
佐藤浩市・石田えり・仲村トオル

ここしばらく短編集ばかりだったので、
腰を落ち着けてじっくり読める、と思いきや
一旦読みはじめたら止まらなくなった。
寝る間を惜しんで、一気に読んだ。

ものすごい壮大な小説。
多分、藤沢周平が書く初めての本ではないか?
1人間の 幼少から老齢に至るまでの半生を描いたのは。
それも1人ではなく、
道場同期入門、身分のまったく異なる5人 それぞれの人生だ。

幼少の頃は身分が違っても同じように分け隔てなく遊ぶ。
但し、物心のつく若者になると先々が自ずと見えてくる。
武士の社会は家柄、毛並みで、生まれた時から先が見えている。
1千石の上士跡取りを除いた、残り4人は、親の身分もさほど高くない(160石、130石、82石、35石)しかも次男、三男の部屋住み。ゆくゆくは同じような身分の家の養子に入れれば御の字のしがない身分。

家中の世界は、「上士と下士は同席せず」。
これがこの本のテーマのひとつ。

さて、1千石の上士跡取り「鹿之助」はあっという間に登りつめ、雲の上の筆頭“家老”。
残りの4人はさて、如何に?
・養子になり姓も変わり、またその名も受け継ぎ姓・名が変わるもの、
・あるいは、とんでもない後家の家に入り、その身を追われるもの
・貧乏下士で汗水流すもそれなりに穏やかなもの
・剣の道で裏街道をいくもの
そして、主人公は・・・

下士の養子からいっきに上り詰め、昔の仲間「1千石の上士跡取り」と真っ向勝負。
そこには昔の友の情けは無い、
あるのは天下取り、藩政を動かす「地位」だ。

主人公が、上士と真っ向勝負で上へ上へと上り詰めていく様は実に面白い。
その時々の役職を追っていくのも勉強になる。
「なんだ?“代官”ってこのくらいの地位なの?」
「あれ?30石ってこんななの?これじゃ“武士の一分”の木村拓哉の家はありえないジャン?」
「藩政は正に内閣で、熾烈な派閥争いだな」
などなど
大変面白く、わくわく、ドキドキしながら読みました。

但し、「下巻」最後の10ページは、
泣き場所を確保して、バックグランドに壮大なクラシック音楽をかけながら読むことをお勧めします。

ちなみに私、最後の10ページは、帰宅途中の地下鉄の中。
バックグランド・ミュージックは「善き人のソナタ」のサントラ
これが妙にバッチリ合って、思わずほろほろ来ました。

■お薦め度:★★★★★(超・お薦め)
*上・下本で躊躇する方もいると思われますが、シドニー・シェルダン同様、読み始めたら止まりません。覚悟のほどを!

始祖鳥記 (小学館文庫)
始祖鳥記 (小学館文庫)
小学館
price : ¥730
release : 2002/11

主人公は魅力的

面白かった。
ただ、歴史の背景などのこと、 自分が不勉強という事もあり、
なかなか頭に入らず 何度も読み返したので時間がかかったかな。
最後は壮快。
でも、もう少し分かりやすい表現であったら もっと面白く読めたかも。
道誉なり〈下〉 (中公文庫)
道誉なり〈下〉 (中公文庫)
中央公論新社
price : ¥620
release : 1999/02

道誉って誰?

佐々木道誉、と聞いて、すぐにピンとくる人はかなりの歴史通なのだろう。
はじめて北方謙三氏の「道誉なり」を読むまで、このような人物が足利尊氏と同じ時代に生きていたことすら知らなかった。
氏の筆は、そんななじみの薄い、歴史教科書にも名前が載らないような一人の漢の生き様を見せて(魅せて?)くれた。己のルールを貫いきながら、時代の中に生きる一人の漢として。
それは、あたかも激しい濁流にあらがって立つ一本の棒杭のように、潔い。

この作品もまた、氏の簡潔な文体が道誉の魅力を最大限に引き出している
一の富―並木拍子郎種取帳 (時代小説文庫)
一の富―並木拍子郎種取帳 (時代小説文庫)
角川春樹事務所
price : ¥693
release : 2004/06

楽しみ一杯の「捕物帖」

直木賞作家松井今朝子の「捕物帖もの」です。
登場人物は、「東洲しゃらくさし」の人気狂言作者並木五瓶(五兵衛)、小でん夫妻と近所の料理屋の娘で本当の娘の様に可愛がっているおあさ、そして、主人公の武家の次男坊で並木五瓶に弟子入りした並木拍子郎です。
この主人公の活躍する「捕物帖」としての楽しみもありますが、芝居町の裏の町並みとそこでの生活振りの描写が素晴らしく楽しいです。そして、拍子郎、おあさの恋物語の楽しみもあります。
更には、拍子郎、おあさの若者としても考え方と、五瓶、小でんの経験に裏付けされた蘊蓄のある語りも楽しめます。この考え方は、現代に通じるものがあります。
内容的には、「阿吽」「出合茶屋」「烏金」「急用札の男」「一の冨」の五編の短編からなりますが、どの作品も人情味に溢れた「いい話」ばかりです。
孟嘗君〈4〉 (講談社文庫)
孟嘗君〈4〉 (講談社文庫)
講談社
price : ¥600
release : 1998/10

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風姿花伝風姿花伝 (ふうしかでん)、風姿華傳 は、世阿弥が記した能の理論書。世阿弥の残した21種の伝書のうち最初の作品。亡父観阿弥の教えをもとに、世阿弥自身が会得した芸道の視点からの解釈を加えた著述になっている。成立は15世紀の初め頃。全七編あり、最初の三つが応



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