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オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
早川書房
price : ¥714
release : 2003/10

鮮やかな推理を楽しもう

アガサ・クリスティーの作品の中でも有名な本作品は、ポワロの名推理の冴えを楽しむのに最高の一品である。もっとも、本格推理物として考えると本作は弱い。基本的に読者が一義的に謎をとくことは不可能であり、ポワロの推理も、かなり無理のある部分が多い。しかしその点は本作にとってはそれほど重要でない。それそれの登場人物が抱えている謎、そして事件そのものの謎を、ポワロが解決していくさまが鮮やかに描かれていて、その鮮やかさたるや、まさしく胸のすくような快感がある。例えるなら、これはよくできた時代劇の殺陣である。実際の真剣勝負とは似ても似つかぬ殺陣ではあるが、主人公の剣士の少なくとも見かけは見事な剣裁きには見とれてしまう。この作品を読んでも、ポワロの推理の強引さに少し突っ込みたくなることもあるが、そんな疑念は、推理が見事に当たったときの描写の楽しさの前には吹き飛んでしまうのである。まさしく作者の講談師的な語りのうまさを見せ付けてくれる作品であろう。
天使の囀り (角川ホラー文庫)
天使の囀り (角川ホラー文庫)
角川書店
price : ¥800
release : 2000/12

読みだしたら止まらない。

タイトルから勝手にサイコホラーかと勘違いしていましたが、とてつもなくコワかった…。 一気に4時間ほどで読んでしまいました。
寄生虫に身体を乗っとられてしまうなんて、想像するのも嫌ですが、この作品を読んで以来、エノキダケが食べられなくなってしまいました…。それにしても、後書きにある瀬名秀明の解説が解らない。何で自分と比べちゃってるんだか…。
七つの黒い夢 (新潮文庫)
七つの黒い夢 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥420
release : 2006/02

怖いというよりも不思議?

ちょっとした暇つぶしで買ったのですが、思いのほか良かったです。
「黒い夢」というぐらいなので、怖いお話なのかと思っていたのですが、怖いというよりも不思議?といった感じのお話ばかり。

7つの短編集なので、どれかひとるぐらいはお気に入りが出来るのではないでしょうか。私は特に「10月はSPAMで満ちている」が好きです。全くホラーなお話じゃないのですが、何かうすら寒いものを感じました。それでいて、読後感はほんわかとしてしまう不思議感がとても好きです。
逆説の日本史〈12〉近世暁光―天下泰平と家康の謎
逆説の日本史〈12〉近世暁光―天下泰平と家康の謎
小学館
price : ¥1,680
release : 2005/04

面白い本です

挑発的な物言いから、トンデモ本ともとられかねない危うさを持ってはいますが、実は歴史の新潮流を一般向けに叙述した本という言い方もできると思います。歴史の新しい見方を広く提示した功績はもっと認められていいと思うのですが。
テロリストのパラソル (講談社文庫)
テロリストのパラソル (講談社文庫)
講談社
price : ¥650
release : 1998/07

一気によんでしまった

 一気に読んでしまいました。
 思わず、ずるずると全共闘世代に引きずられてしまいました。
 おもしろい・・・
 ストーリー、文章のたくみさとあいまって引きずられるように読み進みました。
標的のミシェル (ヴィレッジブックス)
標的のミシェル (ヴィレッジブックス)
ソニーマガジンズ
price : ¥924
release : 2003/06

たたかう検事

天才的な外科手術の腕前を持つヒロインは、退屈なパーティに出席しているときに検事のヒーローと出会います。しかしその出会いは結構最悪で(笑)虫垂炎にかかっていたヒーローはヒロインのドレスに嘔吐してしまいます。でもそんなヒーローに医者として冷静に対応し、ヒーローに完璧に手術を施すヒロイン。おかしくも変わった出会いをした二人は惹かれはじめ、徐々に距離を縮めていきます。
そんな中、ヒロインは一通の封筒を受け取ります。忙しくて封筒の中身を確認できなかったのですが、その中身こそ詐欺行為や違法行為で富を築いた四人の犯罪グループの犯罪履歴が書かれたものでした。そのせいでヒロインは命を狙われることになります。

中盤まではヒーローとヒロインのロマンスが主で、水面下で犯罪グループの魔の手が伸びてきている感じで話は進み、ヒーローとヒロインの絆が深まったとき一気にサスペンス部分が表面化!犯人は分かっているのに「えっ、この人が!?」というアッと驚く展開が用意されていて、前作「心うち砕かれて」同様、作者にしてやられたという感じでした。
そして何よりヒーローがすごく素敵!ちょっと射撃訓練を受けただけで実戦経験がない検事ヒーローが、それでも身体を張ってヒロインを守ろうとする姿はクラクラするほど魅力的で、こんな男性に愛されたいと思わせてくれるヒーローでした。
アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
早川書房
price : ¥714
release : 2003/12

心底驚きの結末

 超有名なトリック(?)らしいが,ミステリ初心者の私は,「アンフェア論争を起こした有名な作品」という以外の予備知識なく読み始めた。アンフェアというからには,犯人探しのために必要な伏線や手掛かりが与えられていないなど,ミステリとして欠陥があるのだろうと思いながらも,有名だからとりあえず……と読み進めた。
 すると……意外な人が真犯人だったので,心底驚いた。私は,アンフェアという意味を誤解していたらしい。読み返すと,伏線や手掛かりは山ほどあったのに……スレたミステリ好きならともかく,普通の人には絶対に真犯人を読み取ることができないのではないか?
 本作のトリックを知らない方は,今すぐ読んで欲しい。必ず,「えー! そうだったのか!」という,心の底からのショックを味わうことができるはずである。英文も比較的簡単で読みやすかった(麻雀の知識がない人には,麻雀シーンが分からないかもしれないが,ここは読み飛ばしても可)。


ある閉ざされた雪の山荘で
ある閉ざされた雪の山荘で
講談社
price : ¥560
release : 1996/01

男女7名が雪の山荘に閉じこめられた設定で何がおきるのか

オーディションに合格した男女7名が雪の山荘に閉じこめられたという設定で舞台稽古が始まるということだ。これもある意味において、クローズドサークルということがいえるだろう。だが、一人ひとりと現実に仲間が消えていくに連れて、彼らの中で何かの疑念が生まれる。これは、本当に芝居なのか?この中で、実際に誰が彼らを殺したのか?このトリックは?

本書の構成は、客観的に書かれている本文と久我和幸の独白という一人称的な構成に分かれている。久我が主人公というわけではないと思いますが、ほかのメンバーのことをあまり知らないということで客観視できるひとだから、選ばれたんだろうね。最後の謎解きのシーンは、嘘ー実ー嘘の3層構造で成り立っていたことになる。言葉というものは、気をつけて発しないといけないものなんだなということが良く分かる。その恨みから、大変なことになったわけだから。最後は、お涙頂戴的な形になったんだけどね。

私は、正直言うと途中でなんとなく犯人が分かりましたね。動機は何かなという感じがしました。最後を読むと、私が考えていたこと以上のことがドラマとして隠されていた。途中で分かったとはいえ、それでも、最後まで読ませるのはさすがです。

電子の星 池袋ウエストゲートパークIV (文春文庫)
電子の星 池袋ウエストゲートパークIV (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥540
release : 2005/09/02

よくできたエンタメ小説

4つ話があるが、どれもわりに示唆に富んでいて、
なかなかおもしろい。
このシリーズにはずれはないなと再認識。
池袋ウエストゲートパークはおもしろいです。
エンターテイメントなんだけど、
そこにちりばめられている断片が社会問題や、
ファッションに通ずるところがあるから。
エンジェル (集英社文庫)
エンジェル (集英社文庫)
集英社
price : ¥560
release : 2002/08

生きるって

石田衣良の作品としては、少し系統が違うような、それでいて不思議な面白味を感じさせられる内容でした。私はフラッシュバックの章から、何がどのように展開するのかドキドキしながら読ませていただきました。内容はちょっと殺人もあり嫌な部分もあったのですが、石田衣良さんらしい「愛」の描き方もよく出ていて総合的に満足な本でした。
奪取〈下〉 (講談社文庫)
奪取〈下〉 (講談社文庫)
講談社
price : ¥750
release : 1999/05

良いですね。

奪取、とても良かったです。
涙、感動、笑い、すべてがつまっています。
始めは読んでいる内は雅人の借金返済が目的かと思いましたが謎のおっさん、じじいが出てきてから完全にはまりました。
どんでん返しに次ぐどんでん返し、読んでいる自分を「あっ!」とさせるような予想を裏切る展開、そして独特の爽快感。
「こんなこと何処で知ったんだ!?」と言う様な一万円札の材質、偽札の作り方、等もかなり詳しく掲載されてます。ここまで手が込んでるとは思いませんでした。
長編ですが一気に読みきりました。読む価値は十分にあると思います。
なぜ勉強するのか? [ソフトバンク新書]
なぜ勉強するのか? [ソフトバンク新書]
ソフトバンククリエイティブ
price : ¥735
release : 2006/12/16

シンプルかつ、しっかりした答え

「なぜ勉強するのか?」という単純な問いに対して、インタビュー形式でじっくり語られる本。論調はすごくやわらかいけど、主張はシンプルではっきりしてて力強い。方向が明確で、ポイントが絞れてる。

タイトルの問いに関して、明確に答えられない人はもちろん、すでに答えを持っている人にも面白い本だと思います。
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)
ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)
角川書店
price : ¥480
release : 2002/07

土着性を活かした恐怖譚

タイトル作「ぼっけえ、きょうてえ(とても、怖い)」を初めとする明治時代の岡山を舞台とした土着性溢れる恐怖譚。読む者の心身にジワジワと染みこんで来る粘着質の戦慄が堪らない。

「ぼっけえ、きょうてえ」は女郎の寝物語として語られるので全編岡山弁である。このため土着性が増しているのは言うまでもないが、その他の作品も当時の岡山地方の様子を巧みに取り入れて往時の雰囲気を醸しだしている。

極貧の生活、閉じられた生活空間における因習、その中での生と性の営み、嫉妬心、疑心暗鬼、死が当たり前のように眼前に現れる恐怖。これらが渾然一体となって、幻想とも現実とも判別がつかぬ物語を紡いで行く作者の手腕は見事である。

本当の恐怖が人間の心の闇からやって来るという事を改めて示してくれた傑作。


解決まではあと6人―5W1H殺人事件 (講談社文庫)
解決まではあと6人―5W1H殺人事件 (講談社文庫)
講談社
price : ¥580
release : 1994/07

さすがは!!

斬新な設定。さっすがですね。おもしろい。
女が次々と興信所を訪れるので、章ごとに舞台となる興信所が異なります。
銘々の興信所で奇妙な依頼をし、それが一応解決される。
そして女は次の興信所へ行きまた奇妙な依頼をする・・・。
これが幾度か繰り返されるうちに事件の真相が読者にのみわかってくるのです。

そしてラスト。びっくりです。そうきたかっ!!
この意外性がミステリーの一番の見せ所。
ここを外さないのはやはり岡嶋二人さんです。


白夜行
白夜行
集英社
price : ¥1,995
release : 1999/08

スキです、この本。

ドラマでやる前から読みたかったのに、
ずっと読めずじまいだったこの本。

ドラマを見て、内容は知っていたものの、
本の中の白夜行の世界は、もっともっと深かった。

あんなにも、冷たく生きることができるのか?

深い愛があるからこそ、できることなのか???


私は、太陽の下を歩いているから、
このまま太陽の下を歩き続けることができるのなら、
一生わからないことなのかもしれないです。


めちゃくちゃぶあついけど、
本当にさらっと読めました。

明るい気持ちには決してなれないけど、
暗い物語は好きじゃないけど、
コレは別格。

好きです。
孤島パズル (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
孤島パズル (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
東京創元社
price : ¥693
release : 1996/08

雰囲気満点のちょっとせつない青春ミステリ

 南の孤島の世界にどっぷり漬かれました! 雰囲気満点。アリスの語りも愛嬌があっていい。マリアと夜中にボート遊びする場面での中原中也の詩の引用はロマンティック(なんという作品なのかな)。ミステリマニアじゃないわたしは最後まで犯人がわかりませんでした。殺人は起こりますが気味の悪い描写がなかったのでさわやかな雰囲気がすべて吹き払われることはなくてよかったです。読んでよかったと心底思える作品です。
 単行本の解説は北村薫氏によるものです。
パノラマ島綺譚―江戸川乱歩全集〈第2巻〉 (光文社文庫)
パノラマ島綺譚―江戸川乱歩全集〈第2巻〉 (光文社文庫)
光文社
price : ¥1,050
release : 2004/08

耽美な奇譚

江戸川乱歩が描く
妖しくも耽美な世界で彩られる
異次元の話を思わせる作品。
「パノラマ島」

怪しげな人物が跋扈し、恐怖が巻き起こる
「一寸法師」

等々乱歩が後々まで指向した
幻惑世界が語られています
奪取〈上〉 (講談社文庫)
奪取〈上〉 (講談社文庫)
講談社
price : ¥750
release : 1999/05

エンターテイメント!

読んだのは何年か前ですが、未だに私が読んだ中で
一番おもしろかったと言えてしまう作品です。
上下巻 平日2日で読み終わった記憶があります。


天使の牙〈下〉 (角川文庫)
天使の牙〈下〉 (角川文庫)
角川書店
price : ¥680
release : 1998/11

「クライン」と君国はどうなる?

はつみを求める君国。
誰も明日香とは考えてくれない。古芳さえ…。
困難を乗り越えて、新しい自分を受け入れられるようになっていく明日香。
そんな明日香(はつみ)に惹かれていく古芳。

古芳の友人の刑事が、話を盛り立ててくれます。義理人情に厚い彼がいなかったら、君国の冷酷さや影響力をここまで感じなかったでしょう。

クライン VS 明日香&古芳から、目が離せません。
三人の悪党―きんぴか〈1〉 (光文社文庫)
三人の悪党―きんぴか〈1〉 (光文社文庫)
光文社
price : ¥560
release : 1999/07

浅田氏のエンタメ作品の原点

「『きんぴか』があれば『プリズンホテル』はいらないのでは?」というような感想を目にしたことがあったが、『プリズンホテル』の方を先に読んで愛着もあったので、こちらを読むのがずいぶん遅れた。読んでみて、たしかに『プリズンホテル』をはじめとしたエンタメ作品に通じる(重なる)部分が多く、これが原点なのだなと思わずにはいられなかった。まだ1巻を読んだきりで比べるのも早計だが、『プリズンホテル』の方がキャラクターも多彩でエピソードにもふくらみがあるように思う。でもその原型は本作『きんぴか』にあり、再生産と言われてもしかたないのかなあ、と思ったりした。でもそれも浅田さんの職人風な仕事の仕方でいまさらわたしが指摘するまでもないか・・・そしてどの本もおもしろいからいいか、と許したくなります。

本作の主人公は、元やくざ、元自衛官、元大蔵官僚。時代遅れの愚直な人間たちであり、愛すべきははみだし者。世の中自体の歯車が狂っている当節、はみだし者こそが世の中をただす!? 気持ちよく笑えて、ほのかな哀感がうっすらと心に残るいい小説です。『プリズンホテル』でいまひとつ好きになれなかった「木戸孝之介」のようなエキセントリックな男が出てこないのも個人的には好み(?)。2、3巻と読みすすめるのが楽しみです。
ベルリンの秋〈下〉 (集英社文庫)
ベルリンの秋〈下〉 (集英社文庫)
集英社
price : ¥940
release : 2001/03

またまた何度も読み返しました

プラハの春では13歳の子供であったカテリーナの娘シルビアとカテリーナとの悲劇的結末を迎えた亮介とのその後の物語。

このベルリの秋は史実というよりは、東と西の体制に阻まれる2人恋愛が書かれている作品で、作品自体の格の高さではプラハの方が上と思いますが、こちらのシルビアの方が人間味があり親近感を持って、また、シルビアの亮介に対する一途な思いに涙し、その亮介との運命に圧倒されながら、一気に読んでしまいました。

波乱を乗り越え、作品の終盤にシルビアが亮介と出逢ったころを回想するシーンが出てきますが、ここを読むとまたプラハの春を読みたくなるという恐ろしい事態(笑)に陥ってしまうくらい、プラハもベルリンも何度も読み返した作品です。

地下街の雨 (集英社文庫)
地下街の雨 (集英社文庫)
集英社
price : ¥540
release : 1998/10

短編は短編だけど

結構期待していただけにやや期待はずれかな。この人の短編は「ステップファザー・ステップ」や「鳩笛草」など秀逸な作品が多くそれらと比べると?だった。何でイマイチなんだろうと思っていたらわかった。ページが少なすぎるのだ。全体として20P?50Pの間の作品集なのでほとんどキャラの掘り下げがなされていない。ショートショートを読んでいる感じであっさり読み終わってしまった。それでも表題作「地下街の雨」はハラハラしながらも読後とてもすっきりとした気分になった。もしかしたら表題作が最初に来てしまったから後の作品に満足できなかったのかも。
黒猫の三角
黒猫の三角
幻冬舎コミックス
price : ¥840
release : 2007/04/24

ミステリ好きなら一読されたし

漫画『黒猫の三角』は、以前、角川書店から発行されていたのだが、
どうやらそっちの方は現在絶版になっているようで、
このたび幻冬舎から表紙を新たにして再発行された。
内容は角川版とほぼ同じ。

ネタバレになるので端的に読後の感想を書くが、
おそらく原作の小説で読むよりも、この漫画の方が、
作品から受ける衝撃が大きいのではないか。
少なくとも、僕はそうだった。
てのひらの闇 (文春文庫)
てのひらの闇 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥660
release : 2002/11

藤原作品の中で一番好き

パターン的には、藤原作品の特徴をなぞった作品で、世界観はテロリストのパラソルとほぼ同じと言っていい。
でも、作品の完成度からみたら、こちらのてのひらの闇の方が格段に上だと思う。
主人公である、リストラ寸前のくたびれた中年男が胸の裡に内包する負の部分を、暗くなりすぎず、じめつかせず、スタイリッシュに描くことに成功している。
いい加減でくたびれていて、情けないのにカッコイイと喝采を贈りたくなる不思議な魅力が、主人公の男性にはある。
微妙に溜飲の下がらない、どちらかというと中途半端なラストが多い藤原作品にあって、この作品のラストシーンはすんなりと腑に落ちてくる感があった。
その意味でも、これは藤原作品の中でイチオシと思える作品になっていると感じた。
二重標的(ダブルターゲット)―東京ベイエリア分署 (ハルキ文庫)
二重標的(ダブルターゲット)―東京ベイエリア分署 (ハルキ文庫)
角川春樹事務所
price : ¥714
release : 2006/04

新たな警察小説の先駆け

東京湾臨海署シリーズ第2弾。
前作が登場人物ひとり一人にスポットをあてるような人物紹介的な要素もあった短編集だったのに対し、今回はそのメンバーたちが一つの大きな事件を追う長編。
続編とはいえ、ここから読んでも十分楽しめる。

ライブハウスで女性が毒を飲んで死んだ事件が発生し、臨海署からも応援を求められる。ほかにも事件が続き要員を裂けないないため、係長の安積は部下を1人派遣。しかしこの部下が警視庁から来た刑事らに不当な扱いを受けるのを見かね、ついには自ら捜査本部に乗り込んでいく。一方、安積班の別のメンバーは、捜査中の別件の資料から、ライブハウス事件につながるヒントを得る。部下を信じる安積は、捜査本部を分裂させてまで、その線で事件を追うが・・・。

個性的な部下たち、官僚的な警視庁のキャリア、警察内部の縄張り意識や階級意識、などなど、横山秀夫らが台頭して定着した感のある警察小説の新要素が、1988年に書かれたこの本にすでにあるのが驚きだ。

事件の捜査の部分では、「これで公判維持できるの?」「それだけの証拠で逮捕状を請求できるの?」と疑問がわく部分もなくはない。けれども、それらの欠点を補う魅力が、主人公の安積にはある。
本人は<愛すべき部下たち----それに対して、自分はただうなずくだけだ>なんて自嘲しているけれど。
モリログ・アカデミィ 5 (5)
モリログ・アカデミィ 5 (5)
メディアファクトリー
price : ¥704
release : 2007/03

今夜は眠れない (角川文庫)
今夜は眠れない (角川文庫)
角川書店
price : ¥540
release : 2002/05

家族とは?

読みやすいし面白い。けれどもラストはあれで本当にハッピーエンドなんでしょうか?
突如降って湧いた5億円遺贈事件によって家族も世間も大騒ぎ。
連日マスコミに追われ、引越しを余儀なくされる。
子供は学校でいじめに合い、夫も会社の人間関係に問題が生じる。
誘拐事件では警察も動員され、顧問弁護士も一時疑いをかけられていますね。

あのエンディングだと、上記の事柄について、それまでとは異なった重みが生じてくるはずです。
社会人・成人としての社会的責任、妻・母親としても。

家族内で「騙したり」「疑ったり」「利用したり」「賭ける」などというのはあまり気分のよいものではありません。
話のなかで、子供が母親の過去に疑問を持って内緒で調べまわる場面もありますね。
夫の浮気も然りです。
宮部みゆきさんの理想とする家族像とはどんなものなのかな?
ふと疑問に思います。
この小説は家族の大切さを教えてはくれないけれど、考えさせてくれると思います。
そして中国の崩壊が始まる (マンガ 入門シリーズ)
そして中国の崩壊が始まる (マンガ 入門シリーズ)
飛鳥新社
price : ¥1,500
release : 2006/08

中国に宗教の自由なんて在りません

表面上は、宗教の自由を装っていますが、すべて管理下の宗教団体です。管理できないとなれば危険思想として弾圧します。「法輪功」はご存じでしょうか?政府がコントロールできないとなると直ぐに弾圧しました。同じ事はチベットでもやっています。
中国の統計のあやふやさは言うまでも無いでしょう。多分、中国は他の諸国と比べても、それほど酷くないという人は、上海など南西の都市部しか見ていないのではないでしょうか。
本書の主張通り、中国は分裂すると思います。希望ではなく、客観的に知っているデータを元にすれば13億の民衆をまとめる事はできないはずです。
中国はGDP世界5位か6位ぐらいの規模で年間成長率は統計を信用すれば年約10%、富裕層が出現している、しかし数字を信用すると富の偏りが激しく貧富の差が激しい。共産主義国なのに失業がある等おかしな事ばかりです。
隠蔽捜査
隠蔽捜査
新潮社
price : ¥1,680
release : 2005/09/21

エリートキャリアの警察小説。

吉川英治新人賞を受賞しているのも道理。よくできた長編警察小説だ。
警察小説といえば、古くは松本清張からずいぶん最近までノンキャリアの刑事(それも所轄)を主人公にしたものが多かった。
そこに警視庁の捜査課と所轄の対立うんぬんが導入され。
さらには、警察庁に属するキャリア警察官僚も登場するようになり。
キャリアの落ちこぼれを主人公にした「新宿鮫」の影響もあるだろう。
「踊る大捜査線」もそうだったし。
そこに事務方や監察官や女性警察官までを登場させてニュー警察小説と呼ばれたのが横山秀夫。
で、この「隠蔽捜査」は、エリート警察官僚小説なのだ。
主人公もそのライバルも上司も部下も、ぜーんぶキャリアのエリートばかり。
国家公務員上級甲試験とかT種とかの合格者。そういう特殊社会での推理小説なんですよね。そこが面白い。
国松警察庁長官狙撃事件で小杉巡査部長の自白を闇に葬られた事例を下敷きにしながら、驚嘆すべきストーリーが生まれていく。
結末も洗練されていて、カタルシス十分。
堅物で変人のエリートが変容していくあたりも読みどころ。
魂萌え!〈下〉 (新潮文庫)
魂萌え!〈下〉 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥540
release : 2006/11

妻と愛人・・・

多くのことを考えさせられる本でした。
読み手が男性か女性かで、感想が大きく違ってくることと思います。
この本は、夫を突然亡くした主婦の立場から書かれていますので、女性の心理が本当によく表現されています。
敏子を取り巻く人間の感情がストレートに描写されていて、最後まで興味深く読み進めていくことができます。
とくに敏子と愛人の昭子との対決は、双方の立場や言い分、感情・・・それぞれにものすごい説得力と迫力があります。                     敏子の夫は、突然に逝ってしまったけれど、ある意味とても幸せなヒトだったかもしれませんね。


臨場
臨場
光文社
price : ¥1,785
release : 2004/04/14

物語の裏に潜んだ本当の物語!?

現場検視官。事件現場に赴き、状況から事件性の有無などを判断する。

本作の主人公は終身検視官と渾名を受け、第一線で活躍をする現場人である。現場の数は元よりも、現場の状況から全てを把握して裏に潜んだ本当の物語といった全てを見透かしてしまう力量を持ってもいる。

捜査官とはちょっと一味違う。座ったままの探偵物語とも違う。不思議な位置にある物語。
ダーティホワイトボーイズ (扶桑社ミステリー)
ダーティホワイトボーイズ (扶桑社ミステリー)
扶桑社
price : ¥918
release : 1997/02

好みが分かれる作品

「極大射程」が本当に面白くて好きになったので、同じ著者のこの作品を買って読んでみましたが、たぶんこの小説は読者によって好みが分かれていくような気がしたのが率直な感想です。

極悪囚人ラマー、知能障害でラマーのいとこオーデル、頭は賢いが臆病者のリチャード、が同じ刑務所にいて、そこから脱獄せざる負えなくなる所から物語は始まります。
そしてそれを追う者としてオクラホマのハイウェーパトロールのバドがメインに置かれ、追い詰め追いつかれ、逃げてはまた追う、その度に激しい銃撃戦の攻防。

極悪ラマーと、その良きファミリーと言える仲間たちの、中盤のやり取りには、何とも言えない哀れみを覚え本来なら違った人生を歩めていたのでは感じさせられました。

その一方で警察官バドは、頭のイイ長男ラス、スポーツのできる次男ジェフ、そして余計な事を言わない聞かない良き妻ジェンと、恵まれたファミリーを持ちながら、同僚の妻と不倫に走りその狭間で揺れながらも捜査を進めていきます。

バドはラマーとの対決で何度も負傷を追いながらも、ラマーを追い続けクライマックスには、煮え切らない所があったバドも多くに結論を出していきますが、個人的にはリチャードの結末にはちょっと意外な感じがしました。

この作品はある意味で分かりやすく面白とは思いましたが、好き嫌いはハッキリと出ると思いますので、興味を持っている方はいろんなレビューを見て判断する事をお勧めします。
シュガークッキーが凍えている (ヴィレッジブックス)
シュガークッキーが凍えている (ヴィレッジブックス)
ソニーマガジンズ
price : ¥893
release : 2005/12

レシピがお得

お菓子探偵ハンナシリーズ第6弾!
前作でレシピの試作に大忙しやった【レイク・エデン料理本】も完成間近。
この本のために大試食会が開催されます。
そしてこの会場でまたしても死体を発見してしまったハンナは身重のアンドリアと末妹ミシェルの力を借りて事件を解決しようと調査を開始します。
スウェンセン3姉妹の息のあった所をみることが出来るのも今作の楽しみの1つです。
ハンナを巡るマイクとノーマンのライバル関係も今作では小休憩って感じです。

300ページなのでいつもより短めなんですが、色々な事が詰め込まれていて盛りだくさんの内容になっています。
少しあっさり目に事件が解決するけど、それはコージーミステリーなのでオッケーです。
なぜ300ページかというと、レイクエデンのとっておき料理集が完全収録されています。
約100ページにわたって収録されてるので圧巻です。
前菜からデザートまで色々と収録されてるので料理好きの人にはいいかも。

さて次作ではついにリサとハーブの結婚式がおこなわれるみたいです。
さらにクッキージャーの前にライバル店が出現するなど楽しみな要素満載です。
早く翻訳してほしいです。

いつも読んでいてこのレイクエデンに住んでみたいって思ってます。
姫椿 (文春文庫)
姫椿 (文春文庫)
文藝春秋
price : ¥540
release : 2003/09

きっと好きな短編がふたつはみつかるはず。

心温まる話だけではない、この短編集。
筆者の本としては平均的なレベルかな。
それでも、きっとあなたの好きな話がふたつは見つかるはず。
筆者の本を読むと、気持ちがよくなり、人間が好きになる。
この本も、またまたそんな本だった。
僕は最後の「永遠の緑」がもっとも気に入った。
この短編は読み返したいと思ったので、星は4つ。
何か手ごろなもので、心地よい読了感のあるものを読みたいと思ったら、この本は薦められる。
極大射程〈下巻〉 (新潮文庫)
極大射程〈下巻〉 (新潮文庫)
新潮社
price : ¥700
release : 1998/12

スカッとさせてもらいましょう

本書が、ボブ・リー・スワガーが登場する4部作の初編だとは知らず読み始めました。
上巻のみの感想は、終盤までほぼ男のみのストーリー展開で一本調子な印象を受け、
正直、読み進めるのに苦労しました。

FBI捜査官のニック・メンフィスとスワガーがライフル射撃では共通しつつも、
対照的な結果がその後の人生を規定させている状況下での両者の遭遇は、下巻へ向けての
物語の飛躍を予感させます。

終盤、スワガーの戦友の未亡人と対面し、主人公自身を語らせることにより登場人物と物語
に幅や余裕が生まれ、それまでの謀略・暗殺・追跡・逃走に耐えて読み進めていた甲斐があ
りました。
下巻を読みたくなるラストです。謀略に対して、復讐あるのみです。スカッとさせてもらいましょう。

下巻の山場は法廷場面ですが、「常に準備せよ」のクライマックスです。

作品とは関係ありませんが、カバーのイラストは安直すぎませんか。


ベルリンの秋〈上〉 (集英社文庫)
ベルリンの秋〈上〉 (集英社文庫)
集英社
price : ¥880
release : 2001/03

う〜む、なんとも・・・・

文体がやや稚拙だけど、読み物として十分楽しめる。
一気に読めて知識も得られる。
一方、「カテリーナ」「シルビア」とのラブロマンスは、日本人男性(著者の年代の?)が抱く幻想そのもの。あまりに露骨過ぎて、恥ずかしいくらい・・・・
卒業―雪月花殺人ゲーム
卒業―雪月花殺人ゲーム
講談社
price : ¥620
release : 1989/05

加賀 初登場作品

加賀恭一郎初登場作品。

登場人物が大学生ということでミステリーではあるが、青春群像小説(古いか?)の雰囲気もあり個人的には読みやすかったと思う。

加賀のキャラクターもしっかりとしているし、今後どういう活躍をするか期待したい。

剣道、茶道と脈絡があるようなないような、結構無理矢理っぽいところもあるが勢いで最後まで一気に読ませられた。

ただ、雪月花のトリックはわかりにくかった。
わかりにくかっただけに、なんだかスッキリしない感じもある。


江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)
江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者 (光文社文庫)
光文社
price : ¥1,050
release : 2004/07/14

ミステリー界の巨匠の初期短編集

乱歩の作品の中でも特に評判の高い初期短編を集めた巻です。
トリックの見事さもさることながら、濃密な文体もまた魅力的。
ページ数が多く、しかも文庫版で安いのでとてもお買い得だと思います。
ηなのに夢のよう
ηなのに夢のよう
講談社
price : ¥924
release : 2007/01/12

「ギリシャ文字のH。」

結局、ラストに分かるのは犯人のトリックだけで犯人その者が自供するなどありえないシリーズでして、推理小説のような劇場犯罪とはまったく違います。面白そうだから首を突っ込もうとか、分からないことが不快だとか、そんな当たり前のような理由が、こんな不思議なエッセンスを加えているのかもしれない。このシリーズもそんな不思議を持ったまま終わるんだろう。

全てを知ろうとして全てを知ることができるわけではない。

全てを知ったとしても全てを理解できるわけではない。
GOTH―リストカット事件
GOTH―リストカット事件
角川書店
price : ¥1,575
release : 2002/07

物語にのめり込める作品です

グロテスクな表現・異常ともいえる犯人の犯行の数々。
そのような内容でも物語にのめり込めるのは、
魅力的な登場人物とラストのどんでん返しでしょう。
他の乙一さんの作品とは一味違うものですが、すばらしい良作です。
びっくり館の殺人 (ミステリーランド)
びっくり館の殺人 (ミステリーランド)
講談社
price : ¥2,100
release : 2006/03

これはこれでアリ

ミステリーランドという形での「変化球」として投げられた「館」の一作。これはこれで、十分シリーズの一作といえると思います。
どこか少年探偵団を彷彿とさせる懐かしい雰囲気も、他の館モノと比して風味は違えど、決して劣っているとは思えません。
また、配本の性格上、描写や文章量は抑えめですが、作中で語られる「びっくり館縁起」のおどろおどろしさ(真相を知ってから再読するとなお一層怖い!)や、読者の目の前に堂々と謎を据えたストーリー、叙述における「さりげない」真相の示唆など、決して「手抜き」しているわけではないと感じました。
ただ、完全に取って付けた鹿谷門美の登場と、オチにつけられたホラー風味が不満なので★?1でしょうか。

個人的には「暗黒館」の分量に多少辟易していた感があったので、これくらいの量で綾辻作品を読ませてもらえるのもいいですね。
最悪 (講談社文庫)
最悪 (講談社文庫)
講談社
price : ¥920
release : 2002/09

ベストセラー

読んでみる価値がある一冊であると思います。町工場の川谷はふざけた近隣の住民から音がウルサイと色々勝手な制約を一方的に発言されます。銀行員のみどりは大型連休の会社の強制キャンプで支店長から強姦未遂に会います。ヤクザの世界に足を踏み入れた和也は関西弁の彼と金の為に工場を訪ねます。この物語はとにかくロウテンションで進んでいく感じです。やはりですね、ここまで最低な事が立て続けに起きてしまうと、ちょっと疲れますね。私的には(みなさん的にもそうでしょうが)あの近隣のどーしょもない屑人間達のどんでん返しぶりがラストの方でみられると思ったのですが...まったく後味が悪い感じですし松村だか村松だかしんねーけどあいつはいったいなんだったんですかー???影であのセレブ親父とつるんでると思ったににさー。みどりの銀行での怪文書の一見もなんだか中途半端で終わりだし。和也に関してもなんだか運良すぎだし。ある意味期待を裏切られた作品でした。しかし読んでる最中は結構まー楽しかったしある程度タイトルで想像しなくてはいけない作品ですよね...
スカイ・クロラ (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)
スカイ・クロラ (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)
中央公論新社
price : ¥1,050
release : 2002/10

僕らのどこかの部分としての『キルドレ』

2001年6月リリース。
森博嗣がミステリィの謎解きを捨て去り純文学に挑戦した最初の作品、と言うことができると思う。このように出来上がった作品を読むと森氏の文章は実に切れる。僕は今の文学界でこれほどの切れ味を持った作家をあと一人しか思いつかない。もう一人は村上春樹だ。

森ワールドからさして重要でも無かった『謎解き』と『おちゃらけな会話』を除く。そこには極めて純度が高まった純水のような新しい森ワールドが出来上がる。この高純度森ワールドの登場人物たちは、純化されつくした生死を語り、空を飛び回る。秒単位で自分の思考と視点を捉え、その時の感情を自分なりに表現する。そういった『刹那』がこの作品にはあると思う。

それは実は『僕ら』を高純化させれば奥の方に残るもの。僕らのどこかの部分としての『キルドレ』を読んでいるのかもしれない。それを描ききった本作こそ森博嗣の現時点の最高傑作だと思う。
覘き小平次 (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)
覘き小平次 (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)
中央公論新社
price : ¥1,050
release : 2005/02

小平次の幽霊という妖怪

小平次という男は極端に存在感の無い男として描かれており、たしかに幽霊のようにも思える。夜道に立つ小平次や、舞台に立った姿は幽霊そのものである。
しかし、小平次に対するお塚の感情は嫌悪であり、多九郎は苛立ちのようなものを覚えている。幽霊に対して嫌悪するのは分からなくもないが、苛立つのは少々おかしい。そもそも同居しているお塚が心底怖がっていないところが、幽霊としては間抜けである。

私は小平次は幽霊ではなく、感情を喚起させ、時に独り語りさせる妖怪ではないかと思っている。

お塚はお塚に嫌悪し、多九郎は多九郎に苛立っているのではないか。
治平は小平次に対して、厚みこそが大事だ、自分を騙せと云う。これは治平自身がポリシーを確認しているに過ぎないように思える。
小平次に殺意を持つ人間は、統べからず自分の境遇を嘆き、今の自分を変えたいと願っている人間なのではないだろうか。

私たちは小平次にこそなれないが、小平次の幽霊という妖怪は私たちの中に棲んでいる。
知らず知らずのうちに、人の恨みを買ったり、羨望を受けたり、また逆に他人に自分を投影してみて卑屈になったり。

おそらく覗き小平次は、いつでも私たちを見ているに違いないのだ。
そのドアの向こうで (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)
そのドアの向こうで (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)
二見書房
price : ¥910
release : 2004/02

大好きです。

ロマンティックというより、エロテッィクなのですが、あまりにもヒーローが不器用で、不器用でほほえましいです。それでいて、ヒロインはあくまでも恋愛(?)を重視して、ヒーローを振り回します。ストーリー展開のテンポもよくてあきません。お気に入りのヒーローです。
五匹の子豚 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
五匹の子豚 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
早川書房
price : ¥756
release : 2003/12

Pigs may shine

犯人が当たったためしがないので、ミステリを読まなくなって久しい。久しぶりにひもといたのが、この1冊。関係者から事情聴取するだけで、16年前に起こった殺人事件の真相を解くポアロ。多少、苦しいこじつけや強引な展開があるかと思いきや、人物描写、エピソードの持つ説得力が、疑心暗鬼な読者をも納得させてしまう。そして、私にはめずらしく、途中から犯人が分かった(嬉しい)。思うに、ゆっくり時間をかけて少しずつ読み進めば、ちゃんと分かるように計算され、書かれているのではないだろうか。いたずらに読者を混乱させる無駄な描写というものが、一切ない。クリスティーの原文をなぞるがごときとても丁寧な翻訳文が、読み易い。原作に星4つ、翻訳にひとつ進呈させていだたく。
オー・マイ・ガアッ!
オー・マイ・ガアッ!
集英社
price : ¥800
release : 2004/11

カジノに行つてみたくなる

明るく樂しい、輕いノリの小説。

ラスベガスのカジノでとんでもない大當たりを出してしまふのは、それぞれに過去を背負つた3人。
當りを出したスロットマシンにそれまで座つていた奴。
そいつがトイレに立つた時にスロットを廻してしまつた奴。
スロットを廻す時に金を出した奴。
さて、賞金は誰のもの?

この小説を讀んでカジノに行つてみたくならない奴はいないだらう。
少なくとも私は行つてみたくなつた。
でも、作者はかう云つてゐる。
オヤジがカジノに行く時には、オヤジ同士か一人で行くこと。
間違つても嫁はんなんかを連れて行つてはいけない。

う?む、まづは嫁はんをどうやつて瞞くらかすかが問題だな・・・


血まみれのマリア―きんぴか〈2〉 (光文社文庫)
血まみれのマリア―きんぴか〈2〉 (光文社文庫)
光文社
price : ¥560
release : 1999/08

巻を重ねるごとにどんどんおもしろくなります!

一巻より断然おもしろい! ストーリーにもふくらみと深みが増して、3人はどんどんかっこよくなります! 貫禄十分であり、男気に溢れ、結束ますます強く、そのくせやさしさは心の奥底に隠して・・・・ ある人が軍曹を指して語ります。「仕方があるまい。良心とは不自由なものだ」 これに尽きるでしょう。何かにつけて割を食い、不自由を強いられているのは、彼らが良心のかたまりだからなのです。

脇役にもとんでもない人物が登場してきます。『プリズンホテル』でもおなじみ、血まみれのマリアさん。「カッポロの古万」こと北海道のある村のヤクザ。彼の出てくるくだりは笑えました。

でも、ゲラゲラ笑えるところも好きなのですが、もっとひかえめな箇所、どの文章にもくすっと笑えたり、皮肉を感じたり、しんみりしたり、さまざまな味わいがあるところが出色。一文一文、充実度の高い小説だなあと思います。

たとえば天政連合会では「月刊侠道通信」という機関紙を発行しているのですが、これについて、
「営業広告をとる苦労がない。(中略)ダイヤルQ2とか、大人のオモチャや防弾チョッキの通販ばかりでは下品になるので、たまには一流企業の総務部長にお願いして上等な広告を載せる余裕もあった。べつにたいしたお願いはしなくても、春先のある季節になれば自然に広告は集まるのであった」
読み流せばどうということのない文章ですが、ちょっと考えるとむむむ・・・とおかしくなります。

ふつうの地の文ですらこうですから、ここぞというときの盛り上げはすごい。痛快です!楽しめます!
数奇にして模型―NUMERICAL MODELS (講談社文庫)
数奇にして模型―NUMERICAL MODELS (講談社文庫)
講談社
price : ¥980
release : 2001/07

S&Mシリーズの中でもベスト3に入る名作です。

タイトルのセンスは相変わらず素晴らしいですね…邦題・洋題ともに…
森先生の作品は読み終わった後、「なるほど、このタイトルはこういう
事だったのか…」と妙に余韻に浸れるものが多いです。どんなに面白い
内容だったとしても、あまりにタイトルにセンスがないと手に取ること
すらしませんしね。(笑)

このシリーズの最大の魅力に「登場人物の個性」が挙げられると思いま
すが、この点に関して言えばシリーズでも上位に入ります。真賀田四季
からはじまり、犀川創平・西之園萌絵…と個性的な人物が登場するシリ
ーズですが、今回の登場人物も詳しくは言えませんが良いですよ。なか
なか架空の人物に憧れるということは難しいと思いますが、このシリー
ズではそれが簡単に出来てしまいます。

もう単なるミステリーの枠を超えた作品ですので、是非♪
パーフェクト・ブルー (創元推理文庫)
パーフェクト・ブルー (創元推理文庫)
東京創元社
price : ¥680
release : 1992/12

スポーツ選手とミステリー

 最初スポーツ選手とミステリーという組合せに妙にちぐはぐな感じを受けていた。でも読んでみると、なるほど面白い。諸岡克彦を殺した犯人は途中から何となくわかったけど、その背景に製薬会社が出てきた。これが絶妙にスポーツ選手とミステリーを融合させた。
 見事だと思った。
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